それは「すべての人間は一円でも安いものを買おうとする(安いものが買えるなら、自国の産業が滅びても構わないと思っている)」という人間観である。
かっこの中は表だっては言われないけれど、そういうことである。
現に日本では1960年代から地方の商店街は壊滅の坂道を転げ落ちたが、これは「郊外のスーパーで一円でも安いものが買えるなら、自分の隣の商店がつぶれても構わない」と商店街の人たち自身が思ったせいで起きたことである。
ということは「シャッター商店街」になるのを防ぐ方法はあった、ということである。
「わずかな価格の差であれば、多少割高でも隣の店で買う。その代わり、隣の店の人にはうちの店で買ってもらう」という相互扶助的な消費行動を人々が守れば商店街は守られた。
「それでは花見酒経済ではないか」と言う人がいるだろうが、経済というのは、本質的に「花見酒」なのである。
落語の『花見酒』が笑劇になるのは、それが二人の間の行き来だからである。あと一人、行きずりの人がそこに加わると、市場が成立する。その「あと一人」を待てなかったところが問題なのだ。
商店街だって店が二軒では「花見酒」である(というか生活必需品が調達できない)。
何軒か並んで相互的な「花見酒」をしていれば、そこに「行きずりの人」が足を止める。
循環が活発に行われている場所に人は惹きつけられる。
だから、何よりも重要なのは、「何かが活発に循環する」という事況そのものを現出されることなのである。
「循環すること」それ自体が経済活動の第一の目的であり、そこで行き来するもののコンテンツには副次的な意味しかない。
「一円でも安いものを買う」という「未熟な」消費行動は、多くの場合「商品の循環」を促す方向に作用する。
けれども、つねに、ではない。
矢沢 オレは、もう、金持ちになりたかった。
なんで? ポルシェ乗りたいもん。
世界に別荘建てたいもん。ビル建てたかったもん。
夕方の4時の、ドライマティーニ飲みたかったもん。
糸井 ふふふふ。
矢沢 いや、ほんとに美味いんだ、これ、試して。
ホテルのバー、夕方4時半くらい。
まだ明るいんだよね。
ホテルのバーだと開いてるのいくらでもあるから、
ドライマティーニ、ビーフィーターでつくってって言って、
クッていくわけよ‥‥‥‥飛ぶよ?
糸井 (笑)
矢沢 クッと飲んで、ドーンと行って、
それ飲んでね、オレがんばろうと思っちゃうんだ。
仕事またがんばろうって思うんだよ。
糸井 儀式だね。
矢沢 儀式、儀式。
赤坂に自分のビル建てたときも行ったな。
最初にオープンハウスやって、
いろんな人呼んで、中、全部見てもらって、
料理も準備して、飲んでもらって、食べてもらって、
本来ならいっしょに飲むべきだったけど、
俺はさっさと、自分でタクシー乗ってホテルに行って、
バーで飲んでたのよ。ひとりで。
やっぱり、ちょっと、くるもんがあったのよ。
オーストラリアの問題、かたつけて、
ほかにもいろんな問題、かたつけて、
赤坂にスタジオちゃんとできたな。
借金はまだ残ってるけど‥‥
「借金いいねー、借金も人生よ」って、
ほんと思ったもん、オレ。
またここから借金返そう、みたいな感じ。
糸井 ドライマティーニを飲みながら。
矢沢 2杯いったら、ぶっ飛ぶから。
糸井 (笑)
矢沢 だからね、ぼくは昔から、えらくなりたかった。
役職とか肩書きじゃなくて、
自分の思ってる意味で、えらくなりたかった。
モノ、欲しかった。
飲みたい酒、飲みたい。
食べたいもの、食べたい。
行きたい場所、行く。
しかもファーストクラスで。
それで、つかりたい温泉につかる。わかる?
糸井 指図はされたくない。
矢沢 指図はされたくない。
全部、自分の金でやってる。
税金? おさめてる。
‥‥けっきょくぼくはね、
ずっとそういう生き方に憧れてたんだ。
糸井 うん。
矢沢 いまの俺が言うと、自慢に聞こえるかもしれない。
「成功したから自慢しちゃって、イヤなやつだな」
って思うかもしれないけど、誤解しないでほしい。
俺は、食えなかったころから、
金がない、二十歳くらいのころから、
ずーっと、同じこと言ってた。
矢沢のこと知ってるやつは、みんな言うよ。
「おまえ二十歳からぜんぜん変わんないね」って。
言ってること一貫して変わってないもん。
あのころから言ってたんだもん。
金持ちになりたいって。
糸井 全部、そのときそのときに、自分で考えたんだね。
矢沢 自分で決めたんだよ。
さっきも言ったように、いろんな価値観があっていい。
いろんな生き方や、いろんなスタンスがあっていい。
いろいろたいへんなことはあるだろうけど、
自分で決めたんなら、自分の力で乗り越えて。
まぁ、泣き言くらい言ってもいいよ。
愚痴のふたつみっつ、言いたいときは、
嫁さんがいたら嫁さんに聞いてもらえばいいじゃん。
でまた、ふたりで、力合わせて乗り越えていくと。
ただ、後悔して、後悔して、自分を恨んで、恨んで、
つまんない人生にはするなよって言ってるわけ。
| — | ほぼ日刊イトイ新聞 - 上がりたかったんだ。E.YAZAWAの就職論 (via wizardblue) |






